100周年記念対談 第三弾

日本代表での活動経験があるOB・OGの座談会

瀬尾勝太×野田夢乃×ラベマイまこと×谷山隼大

進行)白川学さん(高71回)

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福高ラグビー部の100年の歴史をつないでいくため、OB・OGたちの座談会・インタビュー企画を展開していきます。7月9日に、日本代表での活動経験があるOB・OGの座談会を行いました。ジャパンラグビー リーグワン ディビジョン1の静岡ブルーレヴズでアナリストをしている瀬尾勝太さん(高67回)、埼玉パナソニックワイルドナイツでプレーをしている谷山隼大さん(高72回)、太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ等に出場している横河武蔵野Artemi-Starsでプレーをしているラベマイ(旧姓:江渕)まことさん(高68回)、東京山九フェニックス・ラグビークラブでアシスタントコーチをしている野田夢乃さん(高68回)にご参加いただき、白川学さん(高71回)の進行で福高ラグビーについて語っていただきました。

白川
−まずは福高での思い出について教えてください。

瀬尾
−フィットネスはしんどかったよね。その中でも阿蘇合宿の仏舎利ランニングかな。朝早い時間から3km近く山道を走るのはきつかったな。

谷山
−朝が早すぎましたよね。5時スタートだから4時半とかには起きて準備して。

野田
−実は私、仏舎利走ったことないんだよね。代表合宿と被ってたり、阿蘇合宿に行った時も怪我してたりで走れなくて。私が1番印象に残っていることは長崎遠征でまことが眼窩底骨折したことかも。本当に文字通り魚雷のようなタックルしたと思ったら散ってたよね(笑)。

ラベマイ
−そんなこともあったね(笑)。私はフィットネスで夢乃が男子と同じくらいか、それより速かったのが印象に残ってるな。

野田
−東北遠征もあったよね。震災から3年経っていたけど、まだ震災の被害が色濃く残っていて、ラグビー以外の面でも印象に残った。

瀬尾
−福高ラグビー部が90周年で、ちょうど相手の黒沢尻北高校も90周年の時にその遠征があったんだよね。

谷山
−僕が印象に残っているのは最後の負けた試合ですね。それから姉(高70回:美典さん)と一緒に試合に出場したのも印象的な思い出です。

瀬尾
−牟田口先生とか森監督の思い出もたくさんあるよね。みんな映像とかで見たこともあると思うけど、森監督の指導って擬音が多かったりするじゃん?牟田口先生もだけど(笑)。アナリストという立場として試合を見るようになって、改めて感じた。

野田
−指導が抽象的だからこそ、逆に自分で考える力がついた気がする。いい意味で効率とかも考えられたよね。サインとかもかなり独特だったしね。

ラベマイ
−杉山先生はレフリーをやっていたということもあって、ルールとか細かいことを教えてくれたな。結構、ラグビーってルールが複雑というイメージを持っている人も多いと思うけど、環境は整ってるし、初心者の新入生にもお勧めしたいよね。

白川
−皆さんが福岡高校を選んだ理由について教えてください

野田
−私は中学生の時もかしいヤングラガーズでラグビーをやっていて、高校でもラグビーをやりたいなと思って女子でラグビーができる環境を探していました。その時に一個上の代の(増本)京子さん(高67回)が、女子も男子と一緒に練習に参加できるという環境を作ってくれていて、それがきっかけです。女子も男子と同じように練習して、試合とかも出してくれるというのはその当時福高しかなかった。

瀬尾
−僕は2つ上の兄(高65回:優大さん)も福高ラグビー部で、福岡堅樹さんと一緒に花園に出ていて、そこに憧れがあったのと勉強も頑張れるということで選びました。受験を考えた頃には他の高校に行くことは考えていなかった。

谷山
−僕も他の選択肢はあまりなかったですね。姉と従兄弟(高63回:俊平さん)も福高だったし、勝手に福高に行くものだと小さい頃から漠然と思っていました。

ラベマイ
−私は一般受験で福高に入ってきて、今までラグビーに触れてきたことがなかったけどなんとなく福岡高校と言えばラグビーみたいなイメージは持っていて、興味があったから入部を決めたかな。同学年に夢乃がいて活躍していたのも知っていたから入った。厳しい練習もあったけど、今でも入って良かったなと思う。

現在はアシスタントコーチとして東京山九フェニックス・ラグビークラブに所属している野田さん。

白川
−福岡高校ラグビー部で学んだことを教えてください

谷山
−部訓の「殺身為仁(身を殺して仁を為す)」からは影響を受けていると思います。タックルって、この言葉を一番体現していることだと思っていて、チームのために体を張る意識はより強くなりました。福高出身=タックルができるというイメージは、筑波大学でもリーグワンでも持たれています。

瀬尾
−体を張る人はどのレベルでも評価してもらえるし、体を張る人が信頼を得ることは間違いないと思う。

野田
−体を張ることを一番体現していたのはまことだったと思う。女子の大会で、私はヘロヘロになってタックルできないような時でも本当に怖いくらいタックルしていたし。同じチームじゃなくて、敵として試合をすることの方が多かったけど、怖い存在だった。

谷山
−僕は(ラベマイさんと)学年が被ってはいなかったけど、杉山先生から耳にタコができるくらいに「まことのタックルはすごかった」って言われていました。

野田
−大学時代のまことの試合でのタックルが、勝手に別の大学のモチベーションビデオに使われているのをみた時はビビった(笑)

ラベマイ
−タックルは好きだったかな。社会人になってラグビーをしている中で脳震盪を経験して、もちろん”気持ち”は大事だけど、プレーを長く続けるためには怪我しないことも大事と実感して、徐々に技術面にも目をむけるようになった。

現在、横河武蔵野Artemi-Starsに所属しているラベマイさん。

白川
−花園出場のためには東福岡高校に勝たなくてはいけません。実力差はどうしても感じていたのではないかと思いますが、モチベーションはどのように保っていましたか?

瀬尾
−もちろん東福岡に勝って花園を目指していたけど、まずはそこまでに当たる別の高校を目標にして、花園っていう大きな目標をめざして、その1個前の壁を、目の前の敵を倒すっていうのをモチベーションに取り組んでいた。

谷山
−やっぱり難しいですよね。僕はみんなと長くやりたいという気持ちがあったけど、みんなで同じ方向を向くのは難しかった。3年生の春にチームの中で色々話合いをして、その時に「東福岡を倒す」って目標を大々的に立てなくてもいいのかなとも思っていたし。代によっていろんな目標はあると思うけど、(僕達の代は)結局花園を目指すという目標にたどりついたのかな。大学の時も帝京や早稲田になかなか勝てなかったけど、差をしっかりと実感できるようになると、迷わず日本一を目指そうという気持ちにはなれましたね。

白川
−瀬尾さんは大学4年生の時に早稲田大学の一員として日本一を経験していますが、その時のチームの雰囲気はどうでしたか?

瀬尾
−齋藤直人がキャプテンで、後々パリオリンピックメンバーに選ばれた選手も2人いたなどタレント揃いではあった。メンバーも充実してきて、僕が3年生の頃からベスト4に絡めるようになってきてという感じで。届かない距離じゃないと思うことが良い方向に進んだ要因でもあると思う。あとはキャプテンのつくる厳しさがチームをよくしていたのかな。

野田
−私の場合は高校生の時の最終目標が日本代表になることだったんだけど、年間に大会が2回くらいしかなくて。大きな目標を達成するために夏のコベルコカップなど目の前の試合に意識を向けていたかな。常にいいパフォーマンスを出さなきゃいけないし。

ラベマイ
−私も夢乃を近くで見ていて、日本代表への思いが強まったかな。セレクションとかで選ばれるというのを目標にして、そのために今できることを精一杯やることが大事だったと思う。

白川
−「日本代表」という言葉が出てきましたが、日の丸を背負うということについてどのような思いがありますか?

谷山
−僕は高校代表に選ばれたんですけど、当時世代代表に入りたいという気持ちがずっとありました。他の強豪校の選手との差を感じながら日頃の練習に取り組んでいましたね。誤解があるかもしれないけど日本代表になるってことに対して、そこまでプレッシャーはなくて。全校応援とかでチヤホヤされて嬉しかったし(笑)。前に立って応援を受けるとすごく興奮したし、モチベーションになっていました。

野田
−私は結構逆で、日の丸を背負うということは、結果次第でラグビー界を変えられるかもしれないと思っていた。それこそ女子サッカーみたいに結果を出せば、女子ラグビー界にとっていい影響を与えられて、好循環になるし。結果を残さないといけないプレッシャーは感じていたかな。けど日本代表としての試合は楽しかった!

ラベマイ
−私も日本代表でプレーするのは足が震えちゃうくらいに、すごくプレッシャーを感じていて。自分のプレーが今後のラグビー界に与える影響を考えると、なかなかうまくいきませんでした。結局、ラグビーをするということはどのステージにいても変わらないので、目の前のプレーを楽しむのが一番なのかなと今は感じていて、出産して復帰してもそれは変わらないと思います。自分の今のプレーが未来に繋がればいいなと思っています。

瀬尾
−日本代表合宿にアナリストとして帯同したけど、普段のチームとは全く別物だった。過去3年間も代表のアナリストとして動いてはいたけど、帯同した合宿はワールドカップ直前だったということもあり緊張感が違ったし、改めて日本代表っていうのは特別なものだなと感じた。

白川
−現役の福高生に向けてメッセージをお願いします。

谷山
−高校生、それこそ福高だとしっかり勉強もしなきゃだし時間がないと思うんですけど、その中で時間を作る工夫をしてほしいです。僕自身も、ラグビーのスキル的な面はもちろん、体づくりのトレーニングなども可能な限りサポートしていけたらいいなと思っています。ラグビーを楽しむのはもちろん、ラグビーで苦しまないように3年間を過ごしてほしいですね。

ラベマイ
−思い返してみると、高校時代にラグビーをしていた時間はとても楽しかった。高校時代にしか味わえない青春を楽しんでほしい。スポーツをする上でも、人生においても、いい時もあればうまくいかないことが続く時もあって、それはたとえ日本代表でも同じ。私自身、怪我が続いたりしてモチベーションが上がらない時期があった。でもなんの努力もせずにただ試合をこなすだけの日々を経験した時、どんなに良いプレーができたりトライができたりしてもなんの喜びもなくて、何かを極める時は、結果よりもそこに辿り着くまでの試行錯誤や努力の過程が楽しいんだなと気づいた。ラグビーは気持ちも大事だけど技術ももちろん大事で、私はタックルの技術を高めたことでさらにラグビーが楽しくなったし怪我も激減した。みんなも怪我だけには気をつけてほしい。気持ちも大事だけど、しっかり体のケアだったり技術だったりも大切にして取り組んでください!

野田
−高校3年間は短いと思うから、勉強もラグビーも全力で取り組んでほしい。その上で限られた時間をどう上手く使うか、工夫してほしい。私も朝補習の前に練習したりしたけど、結構効果は大きかった。時間を無駄にせず、高校3年間を全力で取り組めば、後々楽になると思う。それと今でも同期とは仲が良いし、同期とのつながりは本当に大事だと思う。部員のことはお互い大事にして過ごしてください、応援しています!

瀬尾
−僕らも同期の仲間はずっと仲良く過ごしている。目標に向かってハードワーク、勉強も遊びも全力でやってほしいなと思います。

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