寄稿 中学17回

甲子園の中園先生

御手洗 正行

昭和十一年度、甲子園競技場にて対崇徳中と死闘を演じている福中ラガーのトライ念じつつ、六甲颪の吹きすさぶベンチに、四十度の高熱をおして、志賀先生や私達の止めるのも聞かれず、微動だにせず試合を見守っていられた軍服姿の中園先生。福中ラグビーを校技のように育て、今日の伝統と栄えをもたらされた淳ちゃん。我等ラグビーOBにとって生涯忘れることのできない先生の墓前に、在校中作詩した回顧譜を捧げます。

回顧譜

五の五 御手洗正行

寒風ついて響きける

試合開始のホイスルに

ラガーの心に聞ゆるは

熱声を轟かす

千二百の同胞の

死んでも勝てとの応援歌

中国の覇者崇徳の

巨体を利しての攻撃も

雪をも溶かす福中の

燃える闘志にひるまずや

汗と血潮に色どった

死力を尽くせし此の一戦

駒を進めて七年の

老躯ひっさげ観戦の

中園先生黙然と

病の身体いたはしく

六甲颪の吹く中に

我等のトライ念じつつ

鎬を削る熱戦に

矢尽き刀は折れたれど

我等は福中健児なり

意気なほ高く揚る時

尊き歴史の跡つぎて

おお回天の覇を成さん

    

(昭和49年 福中・福高ラグビー部OB会発行「福中・福高ラグビー50年史 千代原頭の想い出」P85)