寄稿 高校12回

鉄壁の防禦

中西 博宣

一月十五日恒例の修猷館との定期戦が終り、新チーム発足の際、今年の目標を「無失点」におこうと話し合い、練習の中でも特別にディフェンスには十分時間をさいて研究を続け、三月の新人戦に挑んだ。

三月八日  福高 41-0 福岡商
三月十五日 福高 40-0 宗像
県大会
三月二十日 福高 25-0 九州工
三月二十二日福高 35-0 嘉穂
決勝
三月二十四日福高 6-3 福岡工

メンバー

FW 清原・木下・城戸・立石・横町・野中・広渡・毛利
HB 中西・大津
TB 林・高川・岩村・舟越
FB 長末

決勝戦は小雨降る修猷館グラウンドで、福工有利の戦前の予想をはねのけて逆転優勝。

1トライを許したものの、全員必殺のタックルを秘めて国体、全国大会を目指した。

国体予選を兼ねる九州大会県予選が、夏休みも終りに近づいた八月二十三日に開始された。一回戦の対糸島高戦を大量得点92-0の新記録でスタート、県大会準決勝の飯塚商戦まで順調に進出し、宿敵福岡工と九大グラウンドで対決したが、春の雪辱を期す福工のペースにはまり0―14で完敗。

十一月二十三日には第三十九回全国大会出場の代表決定戦が、平和台競技場で行なわれ、八幡を3-0で破り、修猷館(五回目)と共に県代表として二十二回目の出場権を獲得。残る一ヵ月間の最後の調整期間に出場校のだれもが目指す栄光の座を我々の手中にと願い、猛練習に励み、西宮球技場へ乗り込んだ。

いよいよ一月一日、全国大会が西宮球技場で開催され、一回戦は、福高8-6水戸農、二回戦は福高3-11北見北斗の戦績であった。

一回戦水戸農は昨年の大会で、準々決勝で顔を合わせ惜敗しているだけに、先輩の仇討ちと全員必勝を誓い、後半水戸農の激しい突進を防ぎ、ノーサイドの笛を聞いた時は、皆しばらく呆然と立ち尽くしたままだった。

二回戦で体力を誇る北見北斗高に振り切られ無念の涙をのんだ。

一月十五日には恒例の修猷館との定期戦が行なわれ、46-0と完勝した。なお、この定期戦もこの試合が最終戦となり翌年からは全国大会出場の県代表二校の模範試合となることを聞き、伝統を分けあった永年のライバル修猷館との最後の試合を行なったことを幸運に思い、福高十三回生へとバトンを託した。

七月二十一日から三十日までの十日間、夏合宿が行なわれた。前年までは大牟田延命グラウンドで、三井染料、東圧の諸氏のお世話で合宿していたのを、本年より学校の道場で起居し、みっちりと十日間、明大四年の梅津幸弘先輩を責任リーダーとして鍛えられた。練習試合の相手は地元社会人及び帰郷中の学生現役の先
輩チームをはじめ久留米自衛隊幹候、福岡大、修猷館と恵まれ、十日間一滴の雨も降らないという、全くの不運(?)な天候で全員真っ黒な顔と、名物ビフテキの痛さには本当に泣かされたものだ。

以下当時の部員を紹介する。なお身長、体重は全国大会当時のものである。

HB 中西博宣 主将(165cm 70kg)
当時としては大型ハーフとして、強烈なタックルを武器とし、若いバックスを走らせる。卒業後、CTB岩村と共に地元九州電力に入社、社会人として全国大会、国体に出場、現在も会社の後輩の面倒を見ながら頑張っている。

FW 毛利宗孝(173cm 75kg)
FWリーダーとして、その忠実なフォロー、執ようなタックルは、固い防禦を誇ったチームの要として高く評価された。早大教育学部入学後はラグビーは観戦する方に回り、現在県立八女和泉園勤務。

FW 浜田征二 (163cm 65kg)
小柄ながら独特のセービングと、スクラムサイド突破で度々貢献する。 ボールに対する執着心のためか、反則の多かったのも有名。卒業後は千代田火災海上勤務で、ラグビーとは全く縁を切り、ひたすらゴルフ練習中。

FW 清原英毅(一七〇七三㎏)
突進する大型FWの先陣。顔に似合わず、 やさしい心根が長所でもあり、また反面、気の弱さとして短所にもなった。福岡大を経て、朝日ビール入社、本人は全く飲めないくせに販売成績は常にトップクラスを争う。

FW 城戸一紀 (172cm 73kg)
志賀の島のファイターとして、無茶とも思われるプレーを随所に発揮、チームの士気を鼓舞した男。明大卒業後、執行商店大牟田へ入社、会社のNO1を強引に口説き結婚、アッという間に子供三人、面目躍如。

FW 立石伝(177cm 78kg)
高校生離れの巨体と端正なマスク。練習嫌いと気のやさしさと、数々の話題を持った名物男「伝(デン)」。明大在学中はラグビーよりも体育委員長として実力を発揮。現在は東海興業名古屋に勤務。

FW 広渡常信(163cm 64kg)
片時も手から本を離したことのない程の文学青年で、その豊富な知識は、部の知恵袋として重要な役割を果たす。

FW 児玉雅次(177cm 78kg)
三年の夏合宿前に野球部のエースより転入、巨体を生かした突進とタックルで頭角を表わし、明治大学では主将として活躍。八幡製鉄(新日鉄) 入社後は全国大会の優勝に度々貢献し、全九州の常連として頑張る。

TB 岩村文夫(174cm 62kg)
スピード豊かな突進と、ささるようなタックルはカミソリの刃を思わせる切れ味あり、数々の貴重なトライを生む。ハーフ中西と共に、九電に入社、HBペアで活躍する。

(昭和49年 福中・福高ラグビー部OB会発行「福中・福高ラグビー50年史 千代原頭の想い出」P.208)