福岡修猷館
30 - 33フルタイム |
概要
福岡高ラグビー部の創部100周年記念試合で闘う相手は唯一無二。旧制福岡中に1924(大正13)年7月、ラグビー部が立ち上り、翌25年に創部1周年で対峙したのが修猷館高。この1世紀、好敵手として、しのぎを削ってきた。
会場は福岡市東区の「JAPAN BASE」。日本代表の強化拠点の芝生が映える。「情熱」の赤に染まったジャージーの胸に白線2本。円陣を組み、互いのジャージーを握りしめる現役たちの雄たけびが響いた。
探り合うような序盤の蹴り合いから、流れをたぐり寄せたのは福高。やはりタックルからだった。
2番の児嶌らがダブルタックルで相手を倒し、さらにボールに仕掛けてターンオーバー(攻守逆転)。狭いサイドを攻めて大外の11番の原が一気にゲイン。9番の古賀が内側から堅実に追ってパスを受け、最後は、深くから追い上げていた12番の堂本が先制のトライ。好機を察知し、サポートする意識が得点を生み出す。前半7分、5―0。
その2分後。自陣の22㍍付近で、修猷館のキックをキャッチした12番の堂本が強気にカウンター。真ん中を切り裂いて相手を集めると、防御が薄くなった狭いサイドに9番の古賀が持ち出す好判断で、相手を引きつけてからパス。
大外で待っていたのは、突破力のある2番の児嶌。2人を跳ね飛ばして一気に前へ。最後は9番の古賀がトライ。10―0と突き放す。
さらに3分後。敵陣ゴール前でラインアウトを得ると、サインプレーで前進し、最後は6番の主将大庭がトライ。15―0。3連続トライで畳みかける。
修猷館も黙ってはいない。やはりタックルで流れを変えた。激しいタックルを受けて下がり気味で倒され、福高はたまらず密集で反則。修猷館はタッチキックからのラインアウトでモールを押し込み、サイドを突いてトライ。15―7で前半を折り返した。
迎えた後半。福高のディフェンスは、接点にこだわりすぎたのか密集周りの防御が減って、じりじりと前進を許す。修猷館のロックがラインブレイクし、ゴール前に迫られ、そこから大外に展開。2連続でトライを許す。15―14。後半2分、1点差に迫る。
どちらに流れは傾くのか―。修猷館のハイタックルの反則で、福高はタッチキックを選択。モールを押し込んで崩れたものの、防御が内に寄るのをみて機転良く開き気味に立っていた9番の古賀にパスがわたり、トライ。後半11分、20―14。
さらにギアを上げた。福高はラインアウトから接点をつくり、逆目に振り戻して12番の堂本が一気に前進、反則を誘った。2番の児嶌が隙を逃さず、速攻で攻めてトライ。27―14。あと10分あるかないか。
自陣からでも展開せざるを得なくなった修猷館を防御で封じ込める。10番の松原のタックルから8番の新屋のジャッカルで反則を奪う。ここで選んだのはペナルティーゴール。残り5分余り、2トライ2ゴールを取られても逆転されない安全圏に持っていく。成功して30―14。
16点差。雌雄は決したかにみえた。だが、伝統の一戦は、ただでは終わらなかった。
福高がキックオフのボールを蹴り返すと、修猷館の突破役のフルバックにボールが渡り、カウンターを許す。そのままトライ。30―21で9点差。続くキックオフからの密集で狭いサイドに振られ、またもノーホイッスルトライ。30―28で2点差。
疲れから足が止まったのか、タックルミスか。これまで機能してきた内側からの防御に綻びがみえて、相手を左右に泳がせ、じりじりと前に出られてしまう。
もう残り時間はない。福高陣のゴール前で、ピックアンドゴーで攻め続ける修猷館。耐える福高。そこから修猷館は一気に外へ振った。逆転のトライ。30―33。まさかの逆転負け。
大庭謙伸主将は「先輩方の思いを受け継ぎ、勝たないといけないと強い気持ちで臨んだ」と振り返る。「試合の入りから全力で」と誓い合った通りゲームは進んだ。だが、最後に逆転を許した。「フィットネスが足りない。勝つという気持ちが修猷館に負けていた。でも、これからの福高ラグビーを強くするために、いい試合だった」。
節目に敗れたことに、何かの意味があるわけではない。勝つための糧を得て、この次に、どう闘うのか。
◆ ◆
現役の試合の後に行われたOB戦。現役の借りを返すべく、勝利を飾った。40歳以下チームの真崎晃主将(36)は「世代を超えて修猷館と闘えるのが楽しい。きついのはみんな一緒。それでも、ちゃんと走ってくれた」と胸を張った。
観客席から多くのOB・OGが試合を見守った。長く監督を務めてきた森重隆さん(72)は「白髪の人とか、おるのが、また、いいね。グラウンドにね。なかなか重みがあるね」と伝統を表現。「福高、修猷館、両校とも進学校で、よく頑張っている。部員は勉強もせないかんしね」。公立進学校のラグビー部が歴史を紡いでいく意味を語った。
試合後のレセプションでは、豊山京一・OB・OG会長(69)が「フェアプレーとジェントルマンシップにのっとって、九州のラグビーを引っ張ってきた自負が我々にはある」と述べた。九州の高校で最古の歴史を誇る福高ラグビー部。秋には修猷館に勝ち、全国大会「花園」を目指すことを大庭主将と確認し合ったことを明かした。
レセプション後、100周年記念事業実行委員長の郷原裕季さん(44)は、現役戦に先だって中学生チームの交流戦を開催したことに触れて「福高と修猷館の試合をみてもらい、何かを感じてもらえるような試合ができたと思う」。7月には記念式典、9月には関東遠征を行う。「現役のためにOB・OGのみんなが能動的に動いてくれる。101年目を、それ以降をどうするかを考えていきたい」と話した。
(文・写真/入江剛史)
敬称略
結果詳細(現役戦)
前半 福岡(3T) 15 – 7 (1T1G)修猷館
後半 福岡(2T1G1PG) 15-26 (4T3G)修猷館
合計 福岡(5T1G1PG) 30-33 (5T4G)修猷館
◆ ◆
OB戦(40才以上)
福岡19-12修猷館
OB戦(40才以下)
福岡33-5修猷館
詳細
日付 | 時刻 | シーズン |
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2024年4月27日 | 12:00 PM | 2024 |
会場
JAPAN BASE |
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結果
チーム | TRY | GOAL | PG | DG | PT |
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福岡 | 5 | 1 | 1 | 0 | 30 |
修猷館 | 5 | 4 | 0 | 0 | 33 |